弱いつながり

 『弱いつながり』(東 浩紀 著、幻冬舎)を読んだ。本の内容は哲学書でもあり、人生の指南書でもある。2014年の発行だが、すでに第二版だから、売れているのだろう。たしかに、売れるのは理解できるし、私自身も感銘を受けて、昨日の授業でも紹介したし、自分の子供にも読ませようと思っている。

 主張のメインは「言葉をこえて」であり、言葉以外の物的な事柄の重要性を説いている。特に、旅をすることの重要性は移動の時間であり、その移動の時間こそが経験を内在化させる過程なのだと説いているところだ。いわば、経験という煮汁が自分という具に染みこんでいくための必須肯定が移動時間だと言っているわけだ。常日頃、学生たちに旅をして実際に行かなければ、匂いが分からないし、乾いた風を肌で感じることも出来ないのだから、旅をしなさいと説いている自分と重なることが多々あり、心の中で拍手を送り続けて読んでいる。

 哲学の入門書としてもジャック・デリダのメタゲームの話は分かりやすいし、ルソーの考え方の導入も面白い。そして何より、このような哲学的な話が我々の日常生活とどう結びつけて考えられるかを大変に分かりやすく示している。

 「グーグルの検索ワード」という切り口から入り、この検索ワードを変えるだけで世界観が変わるという、すぐにでも出来るところから、自分の考え方を実体験することで変わると平易な表現で語っている本書は若い人にこれからも勧めていこうと思う。