An Introduction to Functional Grammar

 今週のはてなブログのお会いは「人生に影響を与えた1冊」とのことなので、私の人生の中で、本当に人生が変わった本をあげるとすれば、表題のAn Introduction to Functional Grammarだろう。大学院時代の3年間、言語治療士を将来の職に考えて神経言語学を勉強していた。言語と脳の関係を学ぼうと、病院で実験助手のバイトもしたし、別の病院で2週間言語治療士の研修もした。当時は言語治療士の公的資格や資格試験はなかったので、言って見れば徒弟制度のようにして修行すれば治療士になることもできた時代だった。

 しかし、どうも勉強をしていても、「これが本当に自分の求めていた道だっただろうか?」という疑念は払拭できず、大学院3年目の修士論文もうまく進むことなく、結局2年目の留年が決まった。当時の恩師からは「このまま論文を書くと、卒業はできるかもしれないが、この先の君の未来はない」と引導を渡され、改めて、自分の進むべきを考えなおすために論文を中止して、留年を決めたのだ。

 そうなると、次に何をするか?暗中模索の中、当時聴講していた授業の教科書であったAn Introduction to Functional Grammarを熟読することとした。この本は選択体系機能言語学の聖書と崇められる本で、その中身は語彙文法について機能的な観点から体系的に記述されているのだが、なんとも難しい。用語の使い方にしても、英文そのものも平易ではなかった。だから、何度も何度も繰り返し読み、読むたびに蛍光マーカーや赤鉛筆で線を引くので、しまいには本はカラフルに、そしてページが剥がれるほどにボロボロになったのだが、内心は「日本でこの本をこれくらい読んでいる人間はいないだろう」と自信がつくほどになったし、他の大学院生から、この本についての質問を受ければ、即答出来た。また、授業中には、先生の内容を補足することさえできたことを鮮明に覚えている。(ところが、専門家は他にも福島にいて、自分のつまらない自負心などは後日、木端微塵にふきとぶことになる)

 この本当の出会いによって、結局自分の進むべき道は選択体系機能言語学(当時はこの訳語も存在しなかった)となり、今でもこの理論を中心として、談話分析や英語教育について研究することとなり、今に至っている。

 その後、この本は改定がされ、第2版には著者のM.A.K. Halliday教授のサインを直々にいただいた。また第3版ではM.A.K. Halliday教授と共同執筆したChristian Matthiessen教授からサインをいただいた。昨年この本の第4版が出て、頑張って読んでいるところである。