英語のお膝元

 土日は学会に参加してきた。専門の学会で、今年で全国大会は23回目となる。この学会では常任理事を務めているので、毎回必ず参加している。

 学会では特別講演があるのだが、今回は大学院時代にお世話になった先生の一人、J.Maher教授であった。先生のお話を伺うのは25年ぶりくらいだけれど、相変わらず分かりやすく優しい口調に魅了された。

 さて、Maher先生のお話は英語のお膝元、ブリテン島のお話であった。ケルト語、ゲール語など土着の言語がイギリスにはあったのだが、英語によって話す人々が減少し、絶滅の危機にある。中には、本当にnativeがいなくなった言語もある。ところが、それらの少数言語が今、復活しつつあるというのだ。歌などのポップカルチャーで自分たちのアイデンティティを示すためにこのような少数言語を使ったり、あるいは自治体が積極的に支援して学校教育の中でも取り入れているという。興味深いのは、他からやってきた移民の子供たちがこのような少数言語を受け入れているとのことなのだ。

 英語のお膝元のイギリスや隣のアイルランドで、英語以外の言語が復活した言語社会になっているのは興味深い。そこには自分たちのコミュニティーに対する連帯感や伝統を守ろうというする気持ちが強いのだろう。それに比べて、日本はどうだろうか?話者人口でいえば世界で9位という大言語の日本語を軽んじて、「英語万歳。英語で教育も仕事もすべて!」のような風潮は如何なものかと思う。いずれスマホの翻訳アプリで、外国語を勉強する実用的な意味はなくなるだろう。その時にこそ問われるのは、自分たちのアイデンティティーを示す日本語の力ではないだろうか。

 世界の共通語として英語を学ぶ必要はある。しかし、何事もそれ一つで済まそうという経済的な考え方は、国や文化の力を薄っぺらにしてしまうんじゃないかと思う。無駄なようだが、様々な言語が存在することは考え方の違いを肌で感じることができ、そこから新しいイノベーションも生まれるのではないだろうか。