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そうだったのか、お皿とレコード

しばらく前から英語史の本を読んでいる。英語史は専門ではないが、授業ではその知識が必要になるので、時間のあるときに読む本として、たまに読む。多くは歴史的な出来事と変化の羅列であって、正直、心踊るものでもない。ところが、今読んでいるThe Stories of Englishはなかなか面白い。著者は英語のことについて書かせたら面白いD. Crysital教授で、この先生の本はもう何冊も読んできた。大学2年生のときに読んだ先生のAn Introduction to Liinguisticで初めて言語学の面白さを知り、この世界に入ってきた。またLanguage and the Internetはネット世界の英語の変化と実情をわかりやすく解説していて面白い。大学生のときに一度Crystal博士の講演会を聞いたことがあるが、そのときに「ワッチャマコーリー」という表現を教えてくれてたのが今でも記憶に残っている。それはwhat you might call itのことで、「いわゆる」の意なのだが、この発音がイギリス英語だからなのか、日本人にはわからないよななと、と思いつつ、面白いから、自分でも使ってみようと、それ以降、たまに自分でも使っている。

nさて、話の前段階が長くなったが、このThe Stories of Englishはその巻頭でも、今まで誰も書かなかった歴史を書くと表明して、社会言語学的観点からの記述があり面白い。歴史的な経緯を踏まえてはいるが、そこには現代でも通じる言語接触や音韻変化がいかに英語の歴史と変化に影響を及ぼしているかが書かれている。今朝、その本を読んで面白かったのが、Old English期にあった口蓋化の話。例えば[sk]という摩擦音と破裂音の二つの子音の連鎖が[∫]という口蓋摩擦音になる時期があったとのこと。そこでラテン語起源の単語も変化をすることになる。piscis「魚」(ピスキス)がfishとなり、discus「円盤」(ディスクス)がdishとなるわけだ。そこで円盤が皿になる。きっと丸い平面の物体で共通しているし、日常使う円板状のものは皿だから、皿の意味になったのだろう。そして、この音韻変化の時期を過ぎてから英語の入ったものは[sk-]の音を保持しているとのこと。だから、schoolは[sk-]の音のままなのだそうだ。
 ルネッサンス以降、英語では科学技術にラテン語からの語彙を多く取り入れる。17世紀に円盤の意味で取り入れたのがdiskだが、これもラテン語のdiscusから来ていて、皿と同じ語源だ。ところが、この意味でのdiscusは口蓋化の変化を受けていないから、そのまま「ディスク」の音が入り、円盤やレコード、さらにはコンピューターで使うディスクの意味となる。語源は同じでもdishとdiskで発音も意味も異なるので、共存できるわけだ。こういう、ヘェ〜に巡り合うことが勉強の楽しさだと思う。