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「なんでもいい」は「なんでもよくない」

 授業のときに、「デートの時、お昼になって、彼女に「何食べたい」って聞くよね?」と聞けば、男子学生が頷く。そこで、今度は女子学生に「で、そういう時は、女性はなんていうの?」と聞く。ほとんどの女性は「なんでもいい」と答える。

 そこで、男子学生に言う。これぞ罠であると(笑)。女性の「なんでもいい」は何でもよくないのだ。そこには、「私の食べたいものを察して。食べたいものを選択肢を上げて聞いてよ。どんな美味しいものを提案してくれるのよ」という暗黙のメッセージが込められている。ところが、男性の多くは言葉通りの意味にしかとらないので、そこで「なんでもいいなら、そこのラーメンでもいいよね?」となり、気まづい雰囲気となることがある。

 さて、なんでこんな話をするかというと、言葉の男女差について喚起するためだ。言葉の男女差は単に「ね、だわ」の助詞だけでなく、表現の構成とそこに内在するメッセージが異なる。D. Tanneの言葉を借りればmetamessageということになる。言語表現に伴う隠れたメッセージということだ。また共感的な表現を好むのも女性の特徴のようだ。これもrapportという言葉で表すことができる。男性はあまり共感度を喚起する表現を使わずに自分の価値観を表現するものを好む傾向になるようだ。

 男女差だけでなく、異文化でも怖いことがある。日本の政治家や官僚はよく、「善処します」というが、これは「何もしない」ということ(苦笑)。ところがこれを、we'll do our best.なんて英訳すると大変なことになってしまう。英語でwe'll do our bestといえば、何か具体的なアクションを起こす約束になってしまうからだ。言葉通りの意味と、そこに内在されている意味を知らないと喧嘩だけでなく、国際問題さえ引き起こしかねない。言葉とはかくも怖いものなのである。