1984

1984年夏、私はイギリスのバーミンガムにいた。1ヶ月の語学研修が目的だった。夏のイングランドは夜の9時を過ぎても明るく、夏とはいえ、日本の蒸し暑さを忘れさせてくれる乾いた風が心地よかった。

 1984年。それまでは意識しなかったけれど、この年、書店には1984という本がフィーチャーされて、どんなものだろうかとは思ったけれど、買うことはなかった。著者のジョージ・オーウェルの作品はその2年前、大学1年のときの夏の課題でAnimal Farmを読んだだけだった。だが、1984に書かれた世界は本当に1984年にどうだったのか。それに興味があり、文庫の翻訳版を買ったのだが、結局読むことはなく、その30数年後、ブックオフに売られた。

 ブックオフに売った当日の午後、ふと電子書籍なら文字も大きくなるしと思って購入して、読み始めて、夢中になってしまった。なんでもトランプ現象の一つで、トランプのアメリカは1984に描かれた世界を連想させるとかで、売れているそうだ。だが、実際に読みふけると、これは確かに現実の世界を連想させるには十分すぎるほどの内容だ。テレスクリーンと呼ばれる装置による監視はまさに今のネット社会そのもだし、これを通じて人々の思想や感情まで操作するのも当てはまる。そして、もっとあそこの事情がこうじゃないのかという連想を抱かせるのに十分な内容なのだ。

 ノストラダムスの大預言が昔流行ったけれど、1984を預言書として読んでみよう。ちょっと現実の恐ろしさに背筋が凍るはずだ。

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